呪い

 

これはもう、呪い以外の何物でもないような気がする。

 

6年近く付き合った彼と別れて1年と3ヶ月。

別の人と付き合ってみたりしたものの、(月並みな表現ではあるけれど)私のどこかにぽっかりと空いた穴が塞がれることはなかった。

最初は穴が空いていることさえ認めたくなかった。

けれど、この1年と3ヶ月の間に穴があるな、と思えるようになり、指でそっと淵を撫でるようにしてその穴の存在を確かに認められるまでになった。

確かに、ある。

私のどこかに、あなたのせいで空いた穴がある。

そして、私は穴の空いた私を愛せるようになりつつある。

 

彼と別れてから少なくとも3回は同じような夢を見た。

夢の中で、私は彼を忘れられないまま彼に再び会うのだけれど、最後に彼は私に復縁しよっかと言ってくれるのだ。

しゃーなし、といった様子で。

そして、私はいつだって飛び上がるほど喜んで、夢から覚めると喪失感を味わった。

しかも、そんな夢を初めて見たのはもう彼のことなんか忘れたと思い込んでいた頃だったので、随分と心を乱された。

どうして、なんとも思っていないのに、もう終わったことなのに、これは呪いか、呪いに違いない

 

しかし、呪いでもなんでもこの際はっきり認めたほうがよさそうだった。

私はどうやら、夢に見るほど、復縁を求めているらしい。

 

ただ、彼には彼女がいるのである。

ひっそりと愛しい淵を撫で続けるしかない。

と、思っていた。

 

ひょんな事から彼とまた連絡を取るようになり、この夏ひさしぶりに顔を合わせることになった。

お互いに積もる話があるだろうから、と。

 

ただ、彼には彼女がいるのである。

良き友人として接していかねばならない。

気があるそぶりなど決して見せてはならない。

それが元カノの意地である。

と、思っていた。

 

風の噂で彼が彼女と別れたと知った。

この舞い上がる心をどうやって宥めればいいのだろう。

ワンチャン狙ってるこの心のなんと単純なことか。

 

ここまで来れば、やはりもう呪い以外の何物でもない。

呪いは解かれるのか、呪いに殺されるのか。

どうにでもなればいい。

この夏はもう間も無く。